「超高齢化社会における医療・介護面の問題に、 調剤薬局事務としてのソリューションを提供する。」株式会社裕生堂 日馬夏実さん

「福岡商工会議所NEWS(福岡商工会議所会報誌)」の内の企画「ミライロしごと図鑑」では、

“次世代学生が成長企業を取材し、自分が将来活躍するフィールドを探しにいく”
をテーマに、「福岡」という枠組みに囚われず、面白い取り組みに挑戦する企業を紹介しています。


第7回目となる今回(会報誌10月号)は、株式会社裕生堂 日馬夏実さんに、『10年後』をテーマにお話を伺いました。

NPO法人学生ネットワークWANは、この「ミライロしごと図鑑」の取材・記事執筆を担当しています。
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今月の取材先:株式会社裕生堂とは?

多様化する患者様のニーズに的確に答えられる人材の育成、 調剤過誤の防止を柱とする危機管理、それを支えうる経営と 管理手法の導入を目指し、福岡で保険調剤事業・老人介護事業を展開している。

株式会社裕生堂は、1981 年に有限会社 裕生堂として設立され、翌年から福岡各地で薬局を開局し、調剤薬局事業を展開。その後、2003 年にはグループホーム陽だまり倶楽部南ヶ丘を開設し、老人介護事業をスタート。2009 年には、グループホーム陽だまり倶楽部東大利と介護付有料老 人ホーム木もれ日の館を新たに開設して同事業を拡大しまし た。調剤薬局と介護を通して、地域の人々が心身ともに裕に生きられるように支援していらっしゃいます。
そんな裕生堂薬局寺塚店で調剤薬局事務の主任を務める、日馬 夏実さんに、10年後をテーマにお話を伺いました。

ー現在、日馬さんは調剤薬局事務をされているそうですね。お仕事の内容とその魅力について教えてください。

基本業務としては、患者様が薬局へ持参する処方箋の受付や入力、レセプト請求を行っています。これらに加え、寺塚店は在宅業務をメインとした薬局ですので、個人宅や施設のサポートをしています。また主任としての業務は、新入社員や中途採用社員の教育係として研修などを行うことです。 調剤薬局事務の魅力は、事務の仕事をしつつ接客も行うことだと思います。普通の事務職であればお客様とコミュニケー ションを取る機会が少ないと思うのですが、調剤薬局事務は患者様とお話をする機会が多いように感じているからです。他 の職業ではなかなかできないことを両立していると思います。

ー裕生堂さんは在宅業務を行われているとのことですが、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

サービス付き高齢者住宅に入居している患者様の処方箋を取り扱うことが多いです。サービス付き高齢者住宅の1 階にあるクリニックの医師が往診に行ったり、患者様がご自身で受診されたりして処方された処方箋をいただいて私が入力します。ただ、ご自身でお薬が管理できなかったり、お薬を飲み間違えたりする患者様には、薬剤師が調剤した後に 1 回に飲むべき数種類のお薬を一包化して、それをボックスに配薬した上で施設に届けるところまでが薬局の流れです。同様のサービスを個人宅でも行っており、私たち調剤薬局事務は薬剤師がお薬を届けるためのサポートを行っています。

ー 調剤薬局事務は様々な業務を行っているのですね。多様なお仕事を通して感じる、医療や介護面での課題はありますか?

超高齢化社会という時代に突入しつつある今、医療費が大きな問題であると思います。高齢者が増えれば、当然医療費が 増加します。そのような状況において、先発医薬品と成分が同じで、かつ安く提供することができるジェネリック医薬品の普及が大事だと思います。薬を服用する回数や量を抑えるのはなかなか難しいので、医薬品そのものの価格を下げることによって 医療費を抑えていければいいのではないかと思います。国としてもコストのかからないジェネリック医薬品をさらに導入していかないと、今後社会が成り立たなくなるのではないか、と考えています。その一方で、飲み慣れている先発医薬品が良いという方や、ジェネリック医薬品に変えることに抵抗を感じる方もいらっしゃいます。アレルギーやお薬が体に合わないといった問題も生じ得るので、全員が必ずしもジェネリックに変えなければならないということはありませんが、医療費を抑えるために、私たちは薬局にお越しになる患者様に直接お話しして、ジェネリック医薬品のことをきちんと伝えていく必要があると思います。

ー超高齢化社会において、調剤薬局事務の立ち位置は今後 10 年でどのように変化すると思いますか?

現在のところ、薬剤師の数が少なくその人数を確保できていない状況にあるため、調剤薬局事務の人数を増やしていかな ければならないという傾向があります。最近では調剤事務の業務として、薬を集めるピッキングなどが認められ、できることが増えてきているため、薬剤師の人材不足解消に寄与していくことができるのではないかと思います。薬剤師は薬に関する仕事が主であり、調剤薬局事務としては、入力や保険請求の仕方などに関する専門的な知識をきちんと身につけ、理解していなければならないと思っています。
また超高齢化社会に突入しつつある日本は、介護に目が向けられると思います。これからますます高齢者が増えていきますし、施設に入居されている方だけでなく個人宅でも認知症や寝たきりの方は増えていく可能性が高いので、在宅業務をメイン とした薬局としてフォローしていきたいと考えています。

ー10 年後、裕生堂薬局寺塚店としての目標はありますか?

2 年に1 度行われる調剤報酬改定に向けてしっかりと対応していきたいです。特にこの改定に伴い、ジェネリック医薬品の 使用率に対する加算点数の基準となるパーセンテージは今後さらに高くなっていくと思います。そのため、私たち寺塚店もジェ ネリック医薬品の使用率を上げる取り組みを積極的に行っていかなければなりません。現在、寺塚店の普及率は比較的高い水準にありますが、この数字を維持するだけではなく伸ばしていきたいです。
また、今後の医療業界では介護も重要な問題の一つになってくると思います。他の薬局の取り組みなどを参考にしつつ、 私たちの取り組みを見直すことでよりよいサービスを提供していきたいです。

ー最後に、個人としての10 年後の目標を教えてください。

裕生堂は子育て支援に力を入れているので、その制度を活用し、結婚して子供を産んで、10 年後も調剤薬局事務として 活躍したいと思います。特にキャリア面では、主任に就任してから約 5 年になりますが、力不足と感じることが多々あるので、 もっと板についていけるようになりたいです。まだまだ学ぶべきこともたくさんありますし、経験も浅いので、しっかり勉強して力をつけていきたいです。
現在は、キャリアアップそして自らの知識を増やすために、 12月の登録販売者の資格試験に向けて勉強しています。自らの仕事に繋がりますし、患者様と窓口でお話しする際に、OTC 医薬品(Over The Counterの略語。薬局やドラッグストアなどで自分で選んで買うことができる「要指導医薬品」と「一般用医薬品」を指す。) について質問された場合、しっかりと答えられるようになりたいです。

調剤薬局事務としての日々の仕事を通して医療・介護について問題意識を持ったうえで、その問題解決に向け、自らがで きることに全力で取り組まれている姿がとても印象的でした。
日馬さん、貴重なお話をありがとうございました!