【ミライロ仕事図鑑】株式会社ホスピタブル

次世代を担う学生が、福岡という枠組みに囚われずに面白い取り組みに挑戦する企業を取材し、福岡商工会議所の会報誌「福岡商工会議所NEWS」の記事を作成する企画「ミライロしごと図鑑」。

本メディアでは会報誌にはおさまらなかった写真、インタビューを通して学生が得た気づきを紹介します。

9回目となる今回(会報誌12月号)は、株式会社ホスピタブルさんを取材しました!
※社名は取材時のものです。現在は、アジアフューチャー株式会社と社名を変更されています。

今月の取材先:株式会社ホスピタブルとは?

「日本と韓国間の物的・人的交流及び利益創出を通して国際社会に貢献する」を経営理念とする福岡の企業。韓国人向けのプロモーションやマーケティング事業を行う。

今回取材に協力して頂いた方)株式会社ホスピタブル 代表取締役社長 松清一平さん

「インバウンドで  韓国と日本の『人々』をつなぐ」

貴社の事業内容をお聞かせください。

事業内容は一言でいうと、韓国人向けのマーケティング事 業です。マーケティングをするにあたって、各企業に必要なリ ソースの提供を行っています。仕事をするときに必要なリソース とは「人・もの・金・情報」の4つです。そして、外国人向け のマーケティングつまりインバウンドとは、輸出業なのです。し かし日本企業が輸出業に着手すると先ほど挙げた4つのリソー スのうち、「人」と「情報」が不足しがちです。商品を売るため の専門人材・外国語を話せる人がいない、あるいは自社の情 報の発信方法を知らない。だから、ホスピタブルはその「人」 と「情報」を支援する業務を行っています。具体的な事業内容 の1つ目はインバウンド向けのプロモーション・情報の発信。 そして2つ目は人材紹介で、韓国にいる人材を日本企業に紹介 し就職を斡旋しています。

韓国と関わる事業を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

今の事業を始めたきっかけは非常に根深いです。実は松清 家は対馬藩の武家の出身で、日朝交易で栄え、長年朝鮮半島 の食べ物で命を繋いできたという恩がありました。にもかかわ らず1900年前後、朝鮮の主権がなくなっていた時期に朝鮮に 移り住んで時計屋と宝石屋を始め、相当な荒稼ぎをして地元の 方々にご迷惑をおかけしたそうです。当然そんなことをしていると恨みを買い、我が松清家は先祖代々朝鮮と仲が悪くなってし まいました。

そのことを踏まえると、なぜ韓国に関わる事業をすることに なったのか、ますます興味深いです。

大学生の時に自分のルーツを知りたいと思い、戸籍を調べ、 ゆかりのある土地を訪ねたり、その後入社した九州朝日放送 ㈱で韓国に関する特集を組んだりしました。さらに社会人に なってから、有給休暇を使って韓国に1カ月間留学。韓国人 の教授に韓国語を習っていたあるとき、その教授から「日本で 私の教え子の就職の面倒を見てほしい」と言われたのです。 初めは頑なに断っていたのですが、次第に真剣に考えるように なりました。どうしたら韓国人が日本で就職できるのか。韓国 が嫌いな日本人でも、韓国人を受け入れるだろうか。そうして 韓国経済が豊かになり、訪日観光客が増加したのを感じたの で、㈱ホスピタブルを創業しました。仕事を始めてからたどり 着いた結論は、日本の経営者は韓国を苦手にしているという こと。だから一言もしゃべることなく、韓国人に物が売れるよ うなシステムを構築しようと思いました。儲かりたいけど、関 わりたくない。しかし、実際に年間約700万人もの韓国人が 日本を訪れているので、何らかの受入れ対策をとらなければな らない。そんなときにホスピタブルは頼れる存在になっている と思います。

韓国の情報をどのようにして集めているのでしょうか?

調べるのは簡単。韓国に行けばいいのですよ。プライベート も含めると100回以上行っています。そもそも、マーケティン グの概念や本質とは何か、知っていますか?

ええと…、分かりません。

マーケティングをわかりやすく一言でいうと、「営業活動をし ないで物が売れる状態をつくること」です。もともと必要なも のが売れる層を第一購買層といって、その次のwantが潜在的 なニーズです。「潜在的なニーズがどのようなものか」を調べる のがマーケティングの第一歩です。実地調査をするときに大切 なのは、自ら調べたプライマリーデータを使うこと。逆に人が 調べた情報をセカンダリーデータといいます。メディアが扱うよ うなセカンダリーデータは信憑性に欠けると私は考えているの で、信じません。特に人々は海外の情報に関してメディアに踊 らされすぎているので、嘘をすべて排除して調べていかないと いけない。そうしないとこの仕事はやっていけないのです。

ホスピタブルには調査のシステムがあるのですか?

一番分かりやすいのは、韓国人客をずっと観察する方法で す。釜山や博多で韓国人が何を買っているか、次の購買まで 何分かかるかなどを見ています。このような調査を堂々とできる 場所がHAKATA101  KIMONO  RENTAL(㈱ホスピタブルの訪 日観光客向けの着物・浴衣のレンタル及び着付けサービスを 提供する施設)です。着物の着替えの途中に、次の行動計画 を聞き出します。「プライマリーデータをどれだけ持っているか」 が、マーケティング会社の勝負です。

最近の韓国人のトレンドは何ですか?

韓国人女性は1回の旅行で、飲食とショッピングで7万円ほ ど使いますが、そのうち5万円が飲食代です。食べ歩きで1日 6食食べて、昼からお酒も飲みます。20代の女性が好きな飲 み物は生ビールで、韓国人は女性を含めてアルコールに対する 許容範囲は非常に広いです。ウーロン茶やチューハイを飲みた いというような子は誰もいませんね(笑)。

日本のビールは韓国のものと違うのですか?

日本の方が圧倒的に品質が良く、価格が安いです。日本の中 ジョッキが450円程であるのに対し、韓国では1杯1,500円する のです。韓国人はビールに日本の3倍の料金を払っている。さら に面白いのは、韓国人は予算を1,500円に設定しているので、 「3分の1の価格で飲める!」ではなく「3杯飲める!」と考えると ころ。そのため飲食店からすれば、利益率の高いアルコールが 売れるのは非常においしい話なのです。加えて最近は、生活必 需品をドン・キホーテに買いに行く人が多いように、備蓄品を 買いに行くというベースがあるからリピーターが多い。日本と韓 国、お互いに隣国に必要なものだけを買いに行くというのが生活 の一部となりつつあるのです。実際、700万人の韓国人観光客 のうち65%が旅行会社を使わずに来ています。旅行という感覚 ではないのです。他のインバウンドではありえないですね。

韓国はより身近な国となっているのですね。最後に、自治体 や中小企業などがインバウンドでお客さんを増やすためにでき ることはありますか?

インバウンドで大切なことは消費を促すこと、つまりお金を 使わせることです。お金を使わせるというのは、言いかえる と、どのような価値を提供しているかということなんですね。 外国人の方は日本独自の文化に付加価値を感じています。その 日本文化とは「食文化」と「サブカルチャー」で、この二つが重 要なのです。しかし日本人は日本の文化について知識がなく、 説明できる人がいない。これは企業で言うと、自社商品の商 品知識がないということに等しいです。大事なのは日本文化を 知り、説明できるようになることです。説明された内容を外国 人は付加価値ととらえて、そこにお金を払うのです。外国人は 観光先として日本を選んでくれている。そのときにそれ相応の 話ができるかということが大切なのです。

インバウンドを進めるには、まず自分たちの国や地域について 知り尽くす必要があるのだと改めて実感しました。 松清社長、貴重なお話をありがとうございました!

学生インタビュアーの感想

WANメンバー園田映美音さん(九州大学1年生)

今回の取材では福岡の近隣国である韓国について松清社長にお話を伺いましたが、自分自身韓国について知らないことがたくさんあるというのを改めて実感しました。韓国は、日本と仲が悪い印象がある一方で、多くの韓国人観光客が来日していたり、韓国アイドルが日本で人気だったり、日本との交流が多い国の一つ。マーケティングやインバウンドを通じて、日本と韓国の大きな懸け橋となっているホスピタブルさんの事業は興味深かったです。また、今回の取材で強く感じたのは、松清社長は学生時代から「物事の本質をとらえ、深く考える」ということを実行されているということです。自分の「軸」を持っていることは強みであるので、今年のうちに自らが目指すもの・大切にしたいものに向き合って考える時間を作ろうと思います。

▲HAKATA101((株)ホスピタブルの訪日観光客向けの着物・浴衣のレンタル及び着付けサービスを提供する施設)

▲店内の様子

▲着物・浴衣

▲色とりどりの和風小物  

▲日本ならではのものが並ぶ

松清社長、ありがとうございました!

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